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詩人通りより

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インゲボルグ・バッハマン 『プラハ睦月1964』 (下訳)  

あの夜から
また私は歩み語りはじめた
ボヘミアの響き
ふたたび家郷にいるかのように

モルダウとドナウ
私の少女河とのあいだで
すべてに思いが通じるところ

歩み、しだいにそれは再来し
視覚、私は再度得たとおもわれる

いまだ身を屈め瞬きしながら
窓辺に佇み
陰影の歳月をながめる
ひとつの星すら
私の口もとには佇まず
丘陵を遠ざかりゆく歳月を

フラッチャニの上を
午前六時
タトラより降車する雪掻き人が
皸た蹴爪で
氷殻の瓦礫を掃きだす

私の、私の河の
破裂しそうな岩塊の下で
自由の水が流れいづる

ウラルにまで響きわたるほど
by wwa-wa | 2011-07-03 18:37
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